神秘

遥か昔から語り継がれてきた、不思議な言い伝えを持つ花があります。地中海沿岸にひっそりと咲くマンドラゴラは、ナス科に属する植物です。その根は人の形に似ており、薬草や魔術に用いられてきました。 古来より人々は、マンドラゴラの根に不思議な力を感じ、様々な伝説や迷信を生み出してきました。その存在は歴史書や神話を彩り、人々の想像力を大いに刺激したのです。古代ギリシャでは、愛と美を司る女神アフロディーテに捧げられる、神聖な植物として崇められていました。また、恋の媚薬の原料として密かに用いられていたという話も残っています。旧約聖書にも登場するマンドラゴラ。そこには、不思議な力を秘めた植物として、その存在が記されています。時代を超えて語り継がれる伝説の数々は、マンドラゴラが古来より人々にとって特別な植物であったことを物語っているのでしょう。

春の息吹がまだ感じられない、寒さ厳しい時期に、いち早く鮮やかな黄色い花を咲かせるマンサク。その名の由来は、まさに「まず咲く」「真っ先」といった言葉から来ていると言われ、古くから春の訪れを告げる花として、日本人に愛されてきました。葉が落ちる前に花を咲かせる種類と、落葉後に花を咲かせる種類があり、それぞれ異なる趣を持っています。葉がない枝に、まるでリボンを結んだように咲く花は、そのユニークな形で人々の目を惹きつけます。早春に花を咲かせることから、待ち焦がれていた春の到来を感じさせ、希望を与えてくれる花として親しまれてきました。その明るい黄色は、厳しい冬を乗り越え、新たな始まりの象徴とされています。マンサクの花言葉には、「呪文」「魔力」といった言葉も並びます。これは、その花の不思議な形と、冬の終わりと春の始まりを告げる神秘的な存在感からきているのでしょう。マンサクは、春の暖かさを待ちわびる心と、新たな季節への期待を呼び起こす、力強い生命力を感じさせてくれる花と言えるでしょう。

マリーゴールドと聞いて思い浮かぶのは、まばゆい太陽の光を浴びて、燃えるように咲くオレンジ色や黄色の花ではないでしょうか。その明るく力強い花姿から、マリーゴールドは「太陽の花」と愛称で呼ばれ、世界中で古くから愛されてきました。マリーゴールドの原産地はメキシコと言われています。 古代アステカの人々は、マリーゴールドを神聖な花として崇め、儀式や祝祭に用いていたそうです。日本には江戸時代に渡来し、その華やかさで人々を魅了しました。特に、お盆の時期に仏壇に供える花として定着したのは、マリーゴールドの花期が長く、夏の暑さにも負けずに咲き続けることが理由の一つと考えられています。マリーゴールドの魅力は、その輝くような色合いと、見る人の心を元気づける力強い姿だけではありません。マリーゴールドの学名は「Tagetes」といい、これは、エトルリア神話に登場する、美少年タゲスに由来すると言われています。タゲスは、人々に未来を予言する力を持っていたとされ、マリーゴールドの花言葉にも「予言」「未来を予知する」といった意味があります。太陽の光をいっぱいに浴びて咲くマリーゴールドは、私たちに明るいエネルギーと希望を与えてくれます。そして、その花言葉は、私たちに未来に向かって進んでいく勇気を与えてくれるでしょう。