
露草のささやき:あの日に還る懐かしさ
夏の朝早く、辺り一面に朝露が降りている時間帯に、道端で鮮やかな青い花を咲かせる露草。誰でも一度は、子どもの頃にその青い花びらを摘んで遊んだ記憶があるのではないでしょうか。朝露に濡れた花びらは、まるでビロードのような光沢を放ち、その美しさに目を奪われます。摘み取った花びらを、そっと指先でこすりつけると、たちまち青い色が指に移ります。それはまるで、魔法の絵の具で遊んでいるかのような、不思議な感覚を味わわせてくれました。 露草の花は、昼過ぎにはしぼんでしまう、とても儚い命です。そのはかなさも相まって、露草は古くから人々に愛され、万葉集など、多くの詩歌にも詠まれてきました。 大人になった今、再び露草を見かけると、あの頃夢中で花びらを摘んでいた無邪気な気持ちが蘇ってきます。青い花は、遠い日の記憶を呼び起こし、懐かしさに心が温まります。子どもの頃の純粋な気持ちを思い出させてくれる、露草は、そんな不思議な力を持った花なのです。