
ワレモコウ: 儚くも美しい秋の訪れ
夏の強い日差しが少しずつ弱まり、朝晩に秋の気配を感じる頃になると、山野や野原では、ひっそりと「ワレモコウ」が咲き始めます。ワレモコウは、細い茎の先端に、まるで赤い炎のような、独特の形をした花穂をつけます。一見すると、花びらがないように見えますが、小さな花が密集して咲いているのです。その燃えるような赤色は、緑がかった茶色に変わりゆく草木の中で、ひときわ目を引きます。まるで、静かに燃える炎のように、秋の到来を告げているかのようです。古くから日本人に愛されてきたワレモコウは、秋の寂しさや哀愁を感じさせる「秋の七草」の一つとして、和歌などにも詠まれてきました。派手さはありませんが、どこか心を惹かれる、そんな奥ゆかしさを持つ花です。