「み」

- 水辺を彩る紅一点夏の水辺に、目を引く紅色がぼんやりと浮かび上がる風景があります。それはまるで、水面に映る夕焼けのように美しく、どこか儚げな印象を与えます。この鮮やかな紅色を生み出す花、それがミソハギです。ミソハギは、湿地帯や水辺といった水の豊かな場所を好みます。そのため、田んぼのあぜ道や小川、池のほとりなどでよく見かけます。太陽の光を浴びて輝く水面と、そこに映る紅色の花々。その涼しげな風景は、夏の強い日差しの中でも見る人の心を和ませてくれるでしょう。細い茎はすらりと伸び上がり、その先端に小さな紅色の花をたくさん咲かせます。花は穂のように集まって咲くため、遠くから見るとまるで紅色の霞がかかっているかのように幻想的です。古くから日本人に愛されてきた花であり、その美しさは万葉集にも詠まれ、多くの文学作品にも登場します。ミソハギの名前の由来は、お盆の時期に仏前に供える風習と関係しています。盆花として使われる際には、水を注いだミソハギの葉を、故人を偲びながら仏像にかけ、清めるという習慣がありました。そこから、「禊（みそぎ）萩」と呼ばれるようになり、それが転じてミソハギになったと言われています。夏の水辺を彩る紅一点、ミソハギ。その美しい姿と、古くから伝わる習俗を知ることで、一層趣深く感じられるのではないでしょうか。

- 都忘れとは？都忘れは、4月から5月にかけて、小さく可愛らしい花を咲かせる多年草です。紫色やピンク色、白色などの花を咲かせ、その姿は控えめで清楚な印象を与えます。 ムラサキ科ワスレナグサ属に分類され、日本各地に分布しています。この花の名前の由来は、平安時代にまで遡ります。当時、都落ちした貴族が、この花を見て心を慰め、都への想いを忘れようとした、あるいは、都に残してきた愛しい人のことを忘れようとした、という話が伝えられています。このことから、「都忘れ」というなんとも切ない名前が付けられたと言われています。元々は「エゾムラサキ」という名の野草でしたが、都に持ち帰られ、品種改良が進められました。その結果、現在私たちが見ることのできる、より花が美しく、観賞用として優れた「都忘れ」が誕生したのです。都忘れは、その名前の由来から、「別れ」や「憂いを忘れる」といった花言葉を持っています。しかし、一方で、「強い愛情」や「誠実」といった花言葉も持ち合わせています。これは、都を忘れようとする一方で、心の中には大切な人への想いを持ち続けていた、当時の貴族の心情を表しているのかもしれません。

ミントと聞いてまず思い浮かぶのは、あの清々とした香りではないでしょうか。歯磨き粉やガムなど、私たちの身近なものに広く使われているので、その爽やかさは誰もが一度は体験したことがあるはずです。日々の暮らしに欠かせないものとして親しまれているミントですが、その魅力は香りだけにとどまりません。ミントは、古来よりその効能に着目され、薬用として用いられてきました。現代でも、ハーブティーとして楽しまれたり、アロマテラピーに利用されたりと、幅広い分野で活躍しています。胃腸の調子を整えたり、リラックス効果をもたらしたりと、その効果は多岐に渡ります。このように、ミントは爽やかな香りに加え、人々の生活を豊かにする力強さを兼ね備えています。まさに、「機能」という言葉がふさわしい植物と言えるでしょう。

春の暖かさが感じられるようになると、山々には待ち焦がれていた春の訪れを告げるかのように、ミツバツツジが鮮やかな紫色の花を咲かせます。葉よりも先に花を咲かせる姿は、春の息吹をいち早く感じさせてくれるかのようです。 そのため、ミツバツツジには「待ち焦がれる思い」という花言葉がつけられています。古くから日本では、山里に春の訪れを告げる花として親しまれてきました。その美しさは、多くの歌人や俳人たちに愛され、春の季語としても用いられてきました。ミツバツツジが山肌を彩る様子は、まるで春の到来を祝うかのような華やかさに満ちています。里山を鮮やかに染め上げる姿は、まさに「春の使者」と呼ぶにふさわしいでしょう。 冬の寒さを乗り越え、力強く花開く姿は、私たちの心を和ませ、新たな季節への希望を与えてくれます。