良い便り

五月晴れの空の下、水面に映る鮮やかな緑の葉と、その間から凛と茎を伸ばし咲く紫色の菖蒲の花。その姿は、まさに初夏の訪れを告げる風物詩と言えるでしょう。古くから日本人に愛されてきた菖蒲は、その気品あふれる美しさだけでなく、武士の間では葉の形が刀に似ていることから「尚武」の心を重ね、縁起の良い花として大切にされてきました。端午の節句には、菖蒲の葉をお風呂に浮かべた菖蒲湯に浸かり、邪気を払うとともに健康を願う風習も伝わっています。また、菖蒲は家紋や兜の飾りなどにも多く用いられ、力強さと成功を願う象徴として、武士の精神文化に深く根付いていました。現代でも、庭園の池や水辺に咲く菖蒲は、訪れる人々の目を楽しませ、心を和ませてくれます。その美しい紫の花は、私たちに日本の伝統と、自然の力強さを思い出させてくれるかのようです。